「革新的表現を生み出す“創造への意欲”とは?」プログラマー/アーティスト/ライゾマティクス 真鍋大度
プログラマー/アーティスト/ライゾマティクス 真鍋大度
Fuji Sankei Business i. 平成26年6月29日付 ※無断転載不可 ※掲載期間(2015年7月29日まで)終了後は、リンク切れとなりますが、ご了承ください。

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各界で活躍する個性豊かな人々をゲストに迎え、さまざまな“創造”のあり方を
調査・研究していくマンスリー連載企画「Creators' Bonding」。
株式会社スリーボンドホールディングス土田耕作エグゼクティブ・プロデューサーと、
新たな時代を切り拓く創造性あふれるゲストたちとの対談を通して、
人と人とをくっつける「ボンディング」の可能性を探り、文化発展に寄与していく。
今回のゲストは、東京オリンピックの招致映像から、ライブ演出、アート作品まで、
最先端技術を駆使した表現で注目を集める、ライゾマティクス代表の真鍋大度さん。
現代を象徴するテクノロジー×アートの鬼才。その人並みならぬ“創造への意欲”とは?

文=深沢慶太 / Text : Keita Fukasawa
構成協力=鍵和田啓介 / Transcript : Keisuke Kagiwada
対談者=土田耕作(株式会社スリーボンドホールディングス取締役 / Creators' Bonding エグゼクティブ・プロデューサー)
/ Interlocutor : Kosaku Tsuchida

最先端テクノロジー × デザインの集団「ライゾマティクス」

真鍋さんは、世界的な芸術祭で数々の輝かしい受賞歴を誇るアーティストとして作品を発表するほか、ご自身が代表を務めるクリエイター集団「ライゾマティクス」でも、東京オリンピック招致PR映像、女性3人組テクノポップユニットPerfumeのライブ演出など、最先端テクノロジーを用いた革新的な表現を展開し、幅広く注目を集めています。現在のご活動内容について、教えてください。

企業関連の仕事としては、CMやWebなどの広告関連の仕事や携帯電話アプリの開発、ライブの演出サポート、企業の開発部門と連携して新しいプロトタイプの研究を行うほか、美術館やウェブ上で自主的なアートプロジェクトも展開するなど、活動内容は多岐に渡ります。
最近では、スタッフの数が増えるとともに活動形態が変わってきていて、アートプロジェクトの場合は実際にテクノロジーを駆使した仕掛けを制作することが多いものの、企業との仕事ではアイデアだけを提供するコンサルティング的な内容に留まるケースも増えてきていますね。

アーティストとしての活動と、チームでの活動が一体となっている印象ですが、何故このようなスタイルになったのでしょう?

実は、2006年に大学の同級生3人で会社を設立した時、Webや広告の世界でバリバリ働いていた2人に対し、僕はメディアアートやコンテンポラリーダンス関係のプロジェクトがメインで、コミッション案件(成果に応じた一部を報酬として受け取る仕事)はあまりやっていませんでしたが、共同設立者の齋藤が大きな広告案件を受けるにあたり、フリーランスのままでいることに限界を感じて、会社を設立する流れになったのです。
その一方で、ちょうどその頃から動画共有サービスの「YouTube」が普及し始めて、個人が制作した実験的な作品が世界中の人々の目に触れる機会が大きく広がった。自分の作品が世界中で話題になっただけでなく、そうした作品を広告に採用する流れの中で、作品制作に近い形のコミッションワークが増えていき、それを会社で請け負うケースが増えていったのです。

elevenplay 『cube  for Sonar Tokyo』(撮影 : 本間無量)
Perfume 『Global Project #001』

技術と無関係の要素を“くっつけて”生まれる、新たな体験

ライゾマティクスは先端技術を用いた表現で知られていますが、さまざまなテクノロジーの中でも、特にプログラミングを用いたアートや広告表現に興味を持ったきっかけとは、何だったのでしょうか。

以前からプログラミングをやる機会があったものの、自分の表現ツールにはなっていませんでした。大学を卒業した後に「MaxMSP」というプログラミング環境を使うようになって、初めて自由に表現ができるようになりました。最近はプログラミングといっても、ネット上でオープンソースのツールが多数提供されているので、そうした既存のサービスを組み合わせるだけでもいろいろなことができます。良い時代になったと思いますが、それでも僕らは他にはない新しいアイデアや表現を生み出す側でいたいと考えています。

既存の手法の応用ではなく、まだ誰もやっていない表現を追求することが、自分の中で大きなモチベーションになっているわけですね。最近は、どのような技術に注目していますか。

今、個人的に興味があって、電通の菅野君やQosmoの徳井君と一緒にやっているのは、ビックデータと機械学習、データマイニングを使った新しいエンタメや音楽ですね。何か新しい表現を生み出せないかと、実験的なプロジェクトをいくつか発表しています。こうした手法の面白さは、人間や数学の限界をデータ解析によって超えることができるという点です。マーケティングでは常套手段となっているため目新しい技術ではありませんが、IBMのコグニティブコンピューティング(自ら学習して考えるコンピュータ技術)の研究やプロダクトには面白いものが多く、インスパイアされています。
例えば、NHKの番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演した際も、「プロフェッショナルとは何か」というお題に対して、過去の番組出演者の発言や、自分の過去5年分のブログやインタビュー、アメリカ発のスピーチイベント『TED』の発言などを学習させて、そこからどういうフレーズが自動生成されるかを試みました。計算量が膨大過ぎるため、瞬時に回答が出てくるようにはできませんし、実用化には程遠い状況ですが、それでもアート作品を発表する場のように特殊な環境下であれば、こうした試みを実行できる場合があるわけです。
僕自身は、機械学習関連のライブラリを実際に使い始めたのが最近のことで、まだまだ勉強中というところですが、このようにアートの領域で技術的な限界を追求して、その経験を広告の仕事などに応用していくケースも多いですね。

新しい技術と表現を追求する面白さの一方で、前例のない取り組みには、多大なコストと労力が必要です。それでもなお、新たな表現に心惹かれる理由とは何でしょうか?

確かに、毎回違うことをやっていくのは大変ですし、よく「そのスタンスで儲かるのか」と言われます。パッケージ展開はビジネスモデルを作りやすいので、社内でもよく議題に上がるのは事実なんですが、アイデアを使い回すのは性に合わないし、新しいことをやり続けるほうがモチベーションをキープしやすいというのはあります。
その上で重要なのは、「人の役に立つかどうか」ではなく、「自分たちにとって面白いかどうか」です。人の役に立つものを作ることに関しては、環境が近いとみんなが同じ方向を目指していくわけですから、どうしても激しい競争を強いられます。だから逆に、その技術が求められる方向とはまったく関係のない要素を組み合わせてみるほうが、新しい体験を生み出しやすいのではないか、と考えています。

参加者にさまざまなアイデアの交換、ネットワーキング、協業の機会をもたらすプラットフォームを提供

技術とカルチャーの接点から、表現の未来を創造する

人の役に立つサービスや製品ではなく、逆に人と違うものを作るという姿勢のルーツについて、教えてください。

音楽関係の仕事をしていた両親の影響もあって、高校生の頃にDJを始めたことでしょうか。お客さんの好きな曲をかけて盛り上げようと、最初はサービス精神旺盛にやっていたのですが、数年で飽きてしまいました。そこから逆に、誰もやっていないことを模索しようと思い、最初はみんながプレイしていない楽曲をかけたりしていたのですが、そのうち「MaxMSP」というプログラムを使い始めて……自分でもよくわからない方向に行きましたね(笑)。
岐阜のIAMAS(国際情報科学芸術アカデミー)に通い始めてからは、特殊な信号を入れたアナログのレコードを制作し、その信号を解析して映像をコントロールするなど、もはやサービスとはかけ離れた制作をするようになりました。そうした中で、普通のお客さんには見向きもされないものでも、実験的なパフォーマンスや展示としては受け入れられるシーンがあることを知って、「ついに自分の居場所を見つけたぞ!」と思いました。さらに今では、YouTubeなどSNSの普及によって、そうした活動を世界中の人々に見てもらえる時代になったわけです。自分で焼いたDVDを「見てください」と配って歩いていた頃から考えると、いい時代になったなあと思いますね(笑)。

そうした環境の変化の一方で、工業用ロボットアームやドローン(小型無人ヘリ)と人間のダンスを組み合わせるなど、その技術本来の使い方とは別の発想が、真鍋さんの“創造の秘訣”になっているように思います。

個人的には、テクノロジーや手法が必ずしも最新である必要はなく、そこに新しい視点や問題提起があるかどうかが、大きなポイントになると考えています。一方で、僕の技術のベースになっているのは数学ですが、音楽カルチャーとの接点があったことから、新しい視点が拓けました。つまり、自分の背景となる分野から、あえて別の表現領域へとつながっていくことが重要なのではないでしょうか。

まさに、本企画「Creators' Bonding」の発想につながるお話ですね。

その通りだと思います。日本ではとくにそうですが、物事を分野や職種でとらえる考え方がまだまだ根強い状況の中で、自分の知る技術領域とは異なるカルチャーとの接点をいかに増やしていけるか。それが、これからの日本の表現文化を底上げするための鍵になっていくのではないでしょうか。

対談する真鍋大度さん(左)と土田エグゼクティブ・プロデューサー (撮影 :大石一男)
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